聖フィル♥コラム・リニューアル特別企画第2弾!
先日、シューマンの交響曲第1番を練習していたとき、「なんとなく弾きにくいのはシューマンがピアノ曲を多く作曲しているからでは?」というような話が聞こえました。そのとおり!
オケ関係者には《ライン》や《春》で知られているシューマンですが、〈トロイメライ〉やそれが含まれる《子供の情景》、《謝肉祭》などピアノ曲を思い浮かべる方も多いでしょう。
ピアノの演奏には、ブレスや弓の返しなどの制約はありません。音楽を作る感覚も異なるはず。
でも、それだけではありません。突然ですが、ここでクイズです。
交響曲第1番はシューマンの何曲目のオーケストラ曲?
たとえば、ブラームスは交響曲第1番を作る前に、ピアノ協奏曲第1番を完成しています。また、2台ピアノ用に作曲したいわゆる《ハイドンの主題による変奏曲》をオーケストラ用に編曲して、オーケストレーションを練習しました。
ブラームス、慎重ですね(第1番の完成に20年以上かけたのですから、当然と言えば当然ですが)。
でもシューマンの交響曲第1番は、彼が最初に完成させたオーケストラ曲です。練習も無しに、いきなり交響曲を作ったのです[注1]。
シューマンの作曲の特徴
シューマンはある時期にひとつのジャンルを集中して作曲しました。
初期の作品はほとんどピアノ曲
文学青年で、母の希望もあって大学は法学部へ進んだものの、途中で音楽の道へ。有名なピアノ教師フリードリヒ・ヴィークの内弟子になり、ピアニストを目指します。
結局、断念しましたが(楽器は小さいころから訓練しないと、大成するのは難しいですものね)、その後1839年までの作品はほとんど全てピアノ独奏曲です。
1840年は歌曲の年
裁判でクララ・ヴィークとの結婚許可を勝ち取り、結婚した1840年には一転してピアノ伴奏付きドイツ歌曲を130曲以上作曲。自身「歌曲の年 Liederjahr」と呼んでいます。
そして1841年がオーケストラの年
翌年の1月23日、アドルフ・ベッドガーの詩「春」にインスピレーションを得て、交響曲のスケッチを開始。26日までのわずか4日間で全4楽章のスケッチを完成しました。音楽史上、他に例を見ない早さです。
翌27日から2月20日までかけて、オーケストレーション。3月31日のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による初演の前(3月6日)に、初演を指揮するメンデルスゾーンにスコアを見せて、助言をもらっています。初演は好評でした。
というわけで交響曲第1番は、シューマンが初めて作ったオーケストラ曲。しかも、わずか1ヶ月足らずで完成させた曲です。多少の弾きにくさは大目に見てあげましょう。少々小振りですが、溌剌とした見事な交響曲です。
実はピアノ曲が入り込んでいる
このピアノ曲、どこかで聞いたことがあるはず。
《クライスレリアーナ》op. 16より
シューマンの交響曲第1番第4楽章の第2主題前半には、1838年に作曲したピアノ曲《クライスレリアーナ》op. 16の終曲が2拍子に変形されて使われています。スケッチのとき、突然思い出したのかな。
シューマン:交響曲第1番第4楽章第2主題
注
- 作品表によると、これ以前にピアノ協奏曲を4曲、交響曲を4曲作ろうと試みていますが、いずれも未完またはスケッチで終わりました。1832〜33年に作った「ツヴィッカウ」交響曲は、最初の2楽章を完成しています。Daverio, John (worklist with Eric Sams). ”Schumann, Robert,” in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2d ed., ed. S. Sadie and J. Tyrell (London: Macmillan, 2001), 22: 760−816, 793.
- Schumann in 1850 by Adolph Menzel based on Johann Anton Völlner's daguerreotype. https://youtu.be/ceWwkVmM-cs Mitsuko Uchida. https://youtu.be/1Lk2V6YOcIc Gerard Oskamp, Philharmonie Südwestfalen.
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