聖フィル第30回定期演奏会まで2週間足らず。今回は、3曲のプログラムの中で最も難解な(演奏機会が多くない)、シベリウスの交響曲第7番の聴きどころについて考えてみましょう。
シベリウスと言うと、《フィンランディア》や交響曲第2番を思い浮かべる方が多いと思います。でも、交響曲第7番はこの2曲のようにわかり安い音楽ではありません。
これは100年前に作られた交響曲、つまり20世紀の1/4が過ぎようとする時期に作られた交響曲です。シベリウスはベートーヴェンやブラームスのような、真っ当な(?!?)交響曲を書くわけにはいかなかったのです。
単一楽章の交響曲
真っ当ではない(?!?)交響曲を作るためにシベリウスが工夫したのは、全体の構成。普通の交響曲のように「急―緩―スケルツォ―急」の4楽章で構成されていません。単一楽章です。しかも、シューマンの交響曲第4番のような、4つの楽章に分かれているけれどそれらが続けて演奏される形でもありません。ソナタ形式も使われていません。いろいろな要素が一体化していて、交響曲というよりも交響詩のようです。100年前に作られたに書いたように、初演時のタイトルはFantasia sinfonica I(交響的幻想曲 I)でした。
それではなぜ、交響詩でも幻想曲でもなく交響曲かと言うと、交響曲の要素をさりげなく(本来とは少し異なる形で)使っているから。緩徐楽章のようなところとか、スケルツォ的なところなどが登場するのです。
全体で20分あまりですから深く考え過ぎないで、北欧っぽい感じ、少なくともドイツ語圏やフランスの管弦楽曲(《魔笛》や《オルガン付き》)と異なる雰囲気を楽しむという聴き方もあると思います。
聴きどころ①
もしもシベリウスの構成の工夫を感じたければ、全体を大きく4つのセクションとして捉えることをお勧めします。
- ゆっくりなセクション
- テンポが上がって短調になる、スケルツォ的セクション
- 長調にもどった、踊りのような軽やかなセクション
- 全体を締めくくるセクション
テンポは度々(10回以上)変わりますし、それぞれに推移部分があります。各セクションの区切りを見つけようとするよりも、ああ、いつの間にか音楽の感じが変わったな、次のセクションに入ったなというふうに、ざっくり感じとってみてください。
聴きどころ②
もうひとつのお勧めは、トロンボーン主題を聴くことです。このシベ7は、1番トロンボーンによって支配されていると言っても過言ではありません。
広い音域をゆったりと上がり下がりするトロンボーン主題は、1つ目のゆっくりした部分のクライマックスで初めて登場します。広い原野を見渡すような、遥か遠くに呼びかけるような、静かでそれでいて存在感がある主題です。
これが、スケルツォ・セクション後半の、弦楽器がユニゾンで半音階の大きな渦を奏する上や、3つ目のダンス主題の後にも戻ってきます。もちろん最後のセクションにも登場して、荘厳さを際立たせます。
この曲におけるシベリウスによる調性の工夫も聴きどころのひとつ。でも、独創的で説明も難しいのです。ですから、曲の最後の最後でシ→ドと解決する、という説明だけにしておきます。
シベリウスの番号付き交響曲の最後である第7番、彼の音楽表現の総決算をどうぞお楽しみください。
- Finnish composer Jean Sibelius in 1923. "The last masterpieces 1920-1927." Jean Sibelius. Finnish Club of Helsinki.
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