聖フィル第30回記念演奏会にいらしてくださった皆さま、どうもありがとうございます。
久しぶりのモーツァルト、演奏機会が多くないシベリウスの最後の交響曲、そしてサン=サーンスの《オルガン付き》というプログラム、楽しんでいただけたことと思います。野田優子先生が弾いてくださった聖光学院ラムネ・ホールのオルガンの響き、素晴らしかったですよね。
定期演奏会後の聖フィル♥コラムは、いつもアンコールについて書いています。今回のアンコールは、ジョルジュ・ビゼー作曲《アルルの女》第2組曲の終曲《ファランドール》でした。
《ファランドール》について
2種類の音楽が使われます。
冒頭の堂々とした短調の音楽は、エピファニー用のキャロル《王の行進》。2回目は2拍ずらしたカノンで演奏されます。
ちなみにエピファニーは日本では公現祭、主顕祭などと呼ばれるキリスト教の祝日(レスピーギの交響詩《ローマの祭り》の終曲ですね。実は意訳なのですが)。
星に導かれてはるばる訪ねてきた東方の3博士(3人の王とも)が、生まれたばかりのイエス・キリストを拝んで贈り物を捧げたことを記念する祝日です。1月6日のこの祝日で、クリスマス・シーズンが終了します。
話を《ファランドール》に戻して。《王の行進》に続くのが、長調の軽快な《狂った馬の踊り》。後半ではこの2種類の音楽が重ね合わされ、最後は ffff フォルティッシシシモで締めくくられます。
さて、突然ですがここで質問です。
問:ファランドールって、何?
固有名詞のようですが、みなさん何かご存知でしょうか? 私は知らなくて、弾きながら人の名前?場所の名前?と気になってしまいました。答:ファランドールは踊りの名前
南フランス、特にプロヴァンス地方、アルル地方、タラスコン地方で踊られる古い踊りの名称。男女が手をつないで列になって踊ります。聖体の祝日のような、キリスト教の主要な祝日に踊られるそうです[注1]。
曲がりながら進むこの踊りは、ギリシア神話の英雄テセウスが、怪物ミノタウロスを退治した後に迷宮から脱出する様子を象徴しているとされます。ギリシャやエーゲ海の島々では今でも踊られていて、マルセイユから南フランスに伝わったと考えられています。
音楽は通常6/8拍子。今日プロヴァンス地方では、笛(小型の笛ガルーベ)と太鼓に合わせて踊られます。時には2/4拍子や4/4拍子で表現されます(ビゼーの《ファランドール》もそうですね)。
19世紀や20世紀のフランスの作曲家たち、ビゼー以外にもグノー(オペラ《ミレイユ》)やサン=サーンス(オペラ《野蛮人》)などによって、プロヴァンスの地方色を示すために用いられてきました。
「farandole provence」で検索すると、いろいろな動画が出てきます。これも6/8拍子で、笛と太鼓の音が聞こえます。着飾った男女が楽しそう! 《アルルの女》の《ファランドール》は激しく圧倒的な幕切れですが、お祭りのファランドールは結構のんびりしていますね。
注
https://youtu.be/SEN8Oj3NsMU?si=62mGbh2RX5Zfp3XS, Vence, Le 31 Mars 2013. Portrait of Georges Bizet, photographed by Étienne Carjat (1875).
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