《魔笛》序曲は、トゥッティによる3種類の和音で始まります(この和音の意味は 071 《魔笛》の序曲はなぜ変ホ長調か?参照)。
最初の和音が G B Es。その後、2種類目の和音 C Es G が2回。最初は短く、2回目は長く伸ばされます。そして、3種類目の和音 G Es B も、短い1回の後に長い1回が続きます。
2番目と4番目の短い音は、16分音符(譜例参照)。でも、聖フィルの弦分奏をご指導くださった野崎知之先生がおっしゃったのは:
この音は、楽譜通りの長さで弾くときもあれば、それより長く弾くときも、短く弾くときもある
頭の中をクエスチョン・マークが飛び交います。どうしてモーツァルトが書いたとおりに弾かないことがあるの??
指揮者の田部井剛先生のご指示は、楽譜よりも長く!!でした。しかも、次の音の前に間を開けて。理由は:
みんな、そうやって演奏してきたから
えええ、そうだったの!? あわてて音源を確認してみました。
① DVDの例
私が大学の西洋音楽史の授業で使っているDVDは、ジェイムズ・レヴァイン指揮メトロポリタン歌劇場の1991年ライヴ録音。レヴァインの2つ目の和音は16分音符よりもかなり長いのですが、次の音との間は空けずに振っています。
もうひとつ持っているゲルト・バーナー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のDVDは、1976年ライプツィヒ市立歌劇場での収録。レヴァインと似ていますが、2回目の(2小節目の)短い音符は、次の長い音符の前にほんのちょっと隙間があります。
② CDの場合
家にある2種類のCDも聴き直してみました。ゲオルク・ショルティがウィーン・フィルを指揮した1969年の録音は、レヴァインと同様、短い音と長い音は離れていませんが、短い音も長い音も休符も、とても長く伸ばされています。
一方、アルノルト・エストマン指揮ドロットニングホルム宮廷劇場オーケストラの1992年の録音では、短い和音は16分音符、長い和音は2分音符の長さでした。フェルマータがついているはずの休符もほぼフェルマータ無しの長さでカウントできます。
3つのパターン
確かに、いろいろな長さの16分音符や2分音符、休符による演奏があるようです。《魔笛》の動画を片っ端からチェック。すると、大きく3パターンに分けられることに気づきました。
- 16分音符の音が16分音符より長く、次の音と間が空いている
- 16分音符の音が16分音符より長いが、次の音と間が空いていない
- 16分音符の音が16分音符の長さ
第1のパターン:長い+間
16分音符より長く、次の音と間が空いている演奏(田部井先生のパターン)は、例えばカラヤン。この動画はウィーン・フィルとの1950年の録音だそうですが、ベルリン・フィルとの1980年の録音も同様でした。
他に、カール・ベーム指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1964年録音)や、オットー・クレンペラー指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(1964年)など。トーマス・ビーチャムがベルリン・フィルを1937〜38年に指揮した録音も、このパターンでした(次回に続く)。
https://youtu.be/VMbW9cMTKD0?si=BCG2znBbXQ_HctNL The Metropolitan Opera Orchestra, James Levine. https://youtu.be/7IwRdftTyms?si=fGKIkQQ_ysW_A54g Wiener Philharmoniker, Herbert von Karajan, November 1950. Mozart, c. 1781, detail from portrait by Johann Nepomuk della Croce.
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