018 コラールとは何か ①

2022/07/26

コラール ブラームス ルター

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皆さん、コラールと聞くと何を思い浮かべますか。
オケ関係者なら、ブラームスの交響曲第1番終楽章序奏部のトロンボーン?
吹奏楽関係者なら、ヤン・ヴァン・デル・ローストの《カンタベリー・コラール》?

いったい、コラールって何でしょうか。
金管楽器のハーモニー? 
ゆったりとした静かな音楽?
コラールという言葉は様々な意味に使われるようになりましたが、元々のコラールとは、例えばこのような音楽です。
 

金管楽器でも、ハーモニーでもありません。
声楽曲です。
1本の旋律(=単旋律=モノフォニー)を、複数で歌って(斉唱して)います。

コラールは、ルター派プロテスタントの賛美歌

1517年にマルティン・ルターが95か条の論題をヴィッテンベルク城教会の扉に提示。宗教改革の発端となりました。カトリック教会から破門されたルターを中心に、ルター派プロテスタント教会が誕生します。

ルターは教会音楽においても、数々の改革を行いました。

カトリック教会の典礼音楽は、聖歌隊が歌います。歌詞はラテン語。おまけに、16世紀初頭の宗教音楽は複雑なポリフォニー(多声音楽)書法で作曲されていました。一般会衆は、聖歌隊が歌う美しい、でも歌詞の意味もわからない難しい音楽を、ただ聴くだけ。

ルターは、教会に集まった人たちが、内容を理解できる曲を皆で共に歌うことが重要と考えました。そのためには、

  • 歌詞は母国語のドイツ語
  • モノフォニー(ポリフォニーでは、訓練された者しか歌えません)

これがコラール。ドイツ語の単旋律教会歌で、カトリック教会のグレゴリオ聖歌にあたります。

ルター派プロテスタントの礼拝には、多くのコラールが必要でした。

ルターは、ドイツの既存の宗教的な音楽を用いたり、グレゴリオ聖歌にドイツ語の歌詞をつけたり、世俗曲として知られていた旋律に宗教的な歌詞を付けたり(コントラファクトゥムと呼ばれます)して、コラールのレパートリーを整えます。もちろん、新しいコラールも作曲されました。ルター本人が作ったコラールもたくさんあります[注1]。

Luther:《Ein feste Burg ist unser Gott》

上の動画の《Ein feste Burg ist unser Gott》は、ルターが作詞作曲した中で最も有名なコラール。最初の行は詩篇46に基づき、直訳すると「力強い砦は私たちの神=私たちの神は力強い砦」というような意味。

日本では「神はわがやぐら」として知られています。

動画に見られるルターの署名入りの楽譜には、当時の楽譜と同様、小節線がありません。また、歌詞に合わせて節が作られていて、一定の拍節に収まっていません。1段目が2回繰り返される、AABのバール形式で作曲されています。

歌詞は4節までありますから、この曲を知らない人でも同じ旋律を繰り返し聴くうちに、次第に歌えるようになります。これなら、神への祈りを他人任せ(聖歌隊任せ)にしないで、会衆ひとりひとりが歌い唱えることができます。

でも、これではまだコラールと聞いて思い浮かべる音楽から、ほど遠いですね(②に続く)。

  1. 英語版 Wikipedia の List of hymns by Martin Luther には、40曲を超える彼のコラールがリスト・アップされています。
  2. Martin Luther (1529) by Lucas Cranach the Elder.  https://youtu.be/uI7QMtXBLgY

 

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