017 コントラファゴットは真っ直ぐだった!

2022/07/19

コントラファゴット ハイドン ピリオド楽器 ベートーヴェン モーツァルト 交響曲 第九

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先日、バッハ・コレギウム・ジャパンBCJの演奏会でハイドンの《天地創造》を聴いてきました。旧約聖書の創世記冒頭と、ミルトンの『失楽園』に基づくオラトリオです。BCJ の古典派レパートリーに驚きつつ(でも、バッハのカンタータと同じく声楽曲ですね)、大編成の演奏を堪能してきました。

ところで、舞台の上には1本の長い棒。コントラファゴット(ダブル・バスーン)のピリオド楽器です、現代のコントラファゴットは、4回折り曲げて、全長140cmほどの長さに収まっています。でも元々はこんな複雑な形ではなく、ただの(?!?)長いファゴットでした。

19世紀前半オーストリアの標準的コントラファゴット

この図像は、c.1825〜33に Johann Tobias Uhlmann (1776〜1838)によって作られたコントラファゴット。屋外で演奏される音楽に広く使われました。最低音はC、接合部にチューニングスライドを備えているのが特徴(サイズは記載無し)[注1]。

コントラファゴットの音域は、ファゴット1オクターヴ下。そのためには、ファゴットの倍の長さの管が必要です(弦と同じで、管も長さが半分になると1オクターヴ上の音が鳴ります。フルートとピッコロの関係を思い浮かべてください)。

つまり、およそ134cmの現在のファゴットの1オクターヴ下を吹くなら、倍の長さが必要。人間の背の高さよりずっと長いファゴット、壮観でした。

ところで、コントラファゴットっていつ頃から使われていたのでしょうか。

コントラファゴットの小歴史

ベートーヴェンは交響曲第5番の終楽章で、ピッコロやトロンボーン3本とともに交響曲に導入しました。低音補強のためですね。第九の終楽章でも、トルコ行進曲のセクションで大活躍。ハイドンの《天地創造》や、彼のもう一つのオラトリオ《四季》でも使われています[注2]。

前身楽器は1600年以前から記録がありますが、コントラファゴットは主にイギリスで、18世紀半ばに開発されました。

ロンドンの有名な楽器製作者トーマス・ステンズビー Thomas Stanesby(c.1668 – 1734)1727年にコントラファゴットを制作したと伝えられています。また彼の息子Thomas Stanesby Jr.(1692 – 1754)による1739年制作のコントラファゴット(ダブリンの国立博物館所蔵)は、4つのキーを持つ当時のファゴットのように作られ、最低音はB♭″全長253cmです[注3]。

一方ドイツでは、通常のファゴットの1オクターヴ下からのコントラファゴットよりも、4度下からの「Quartfagott」が一般的でした[注3]。モーツァルトは《フリーメイソンのための葬送音楽》K477(479 a)で、 C′ まで下がる「グラン・ファゴット」パートを書いています。

ウィーン宮廷オーケストラのコントラファゴット

1807年にはウィーンの宮廷オーケストラにコントラファゴットが加わりました[注3]。ベートーヴェンの交響曲第5番と第6番の初演は、その翌年1808年の12月。でも《天地創造》の公開初演は1799年です。あれれ、賛助を頼んだのかな?? 

ハイドンが晩年にオラトリオを作曲したのは、1790年代にザロモン・コンサートのためにロンドンに2度滞在し、ヘンデルのオラトリオの大規模上演に接したことがきっかけですが、楽器編成にコントラファゴットを含めたことも、ロンドン滞在と関係ありそうですね。

  1. 図像の説明には最低音がCと書かれていましたが、C’のことではないかと思います。
  2. バッハの《ヨハネ受難曲》BWV245でもコントラファゴットが使われます。1947版の通奏低音パートのひとつに、 pro Bassono grosso 大きなバスーン)という書き込みがあるからです。ただこれは、バッハ本人の筆跡かどうか確定できず、また通常のバスーン以外の特殊な楽器を意味するかどうかもはっきりわかりません。
  3. WaterhouseWilliam. "Bassoon," in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2d ed., ed. S. Sadie and J. Tyrell (London: Macmillan, 2001), 2: 892.
  4. Portrait of Joseph Haydn by Thomas Hardy (1791). I am grateful to Mr. K.K. and Mr. K.Y.

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