109 シベ2の聴きどころ:シベリウスとベートーヴェン②

2026/02/20

シベリウス ベートーヴェン 交響曲

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前回シベリウスとベートーヴェン①で、20世紀初頭に作曲されたシベリウスの交響曲第2番が、約100年前のベートーヴェンの交響曲の構造や編成とほぼ変わらないことを説明しました。

生まれ育った国も時代も大きく異なる二人ですが、シベリウスがベートーヴェンをリスペクトし、彼から多くを学んだことがはっきりとわかります(もちろん、ベートーヴェンに学ばない交響曲作曲家なんて、ひとりもいませんが)。

実は、構造や編成以上にシベ2がベートーヴェンの交響曲と共通している点があります。それは、作曲の仕方。主題動機労作とか動機労作と呼ばれるやり方を使っているのです。

動機労作とは

動機モティーフ)とは、主題(テーマ)を構成する小さなエレメント、ユニットのことです。普通は主題に含まれる複数の動機を組み合わせ発展させて、その後の部分(特に推移部や展開部)を作ります。

動機労作の一番わかりやすい例は、ベート―ヴェンの交響曲5《運命》。冒頭の「ソ-ソ-ソ-ミ♭ー」は、いわゆる「運命動機」。これを組み合わせて第1楽章を構成しています。さらに、この動機を変形しながら第2楽章以降も使用。「運命動機」(だけ)で、交響曲をひとつ作ってしまいました[注1]。他にも第3番《英雄》や第6番《田園》など、ウィーン中期前半と呼ばれる時期に作られた作品で、動機労作が多用されています。

この作曲法はシューベルトやシューマン、ブラームス、マーラーら、ドイツ語圏の作曲家たちに受け継がれます。ブラームスの交響曲1「ド-ド#-レ」や第2番「レ-ド#-レ」、マーラーの交響曲第1番の下降4度動機(レ-ラなど)が、すぐに思い出されますね。

ベートーヴェンの約100年後に、遠い北欧フィンランドに生まれたシベリウスですが、この第2番ではっきりした動機労作が見られます。この曲には、とてもわかりやすい2種類の動機が使われています。

2つの動機の動機労作

ひとつは、同音反復の動機。第1楽章は、穏やかに繰り返されるファ#の音で始まりますファ#を5回。さらにソを3回とラを3回。

譜例1 シベリウス:交響曲第2番第1楽章冒頭

もうひとつは、上行する3音動機。同音反復を除くと、主題冒頭は「ファ#-ソ-ラ」という動き(譜例1の青い◯の音)。この、順次進行(隣の音に進むこと)で上行する3音動機が、より重要です。

続く2つの楽章では、一見これらの動機から離れたように感じられます。でも、第2楽章でヴァイオリンが加わって以降の部分、特に弦楽器の16分音符の音型は、2つの動機の変形と考えられます。また、第3楽章の機関銃のようなスケルツォも、3音の同音反復で始まります。♭6つの変ト長調に転調したトリオでは、オーボエがシ♭をなんと8回反復する主題を奏でます。

でも、何よりもわかりやすい動機労作は、終楽章のテーマ。上行する3音動機が、2分音符で戻ってくるのです(「レ-ミ-ファ#」と「ド#-レ-ミ」)。第1楽章の木管楽器とは異なり、ここではトランペットが応答します。ベートーヴェンの《運命》終楽章のような輝かしい勝利感を豊かに際立たせています。

譜例2 シベリウス:交響曲第2番第4楽章冒頭

考えてみると、同音反復で始まる第1楽章第1主題ってあまり無いような。さきほどの運命動機の「ソ-ソ-ソ」3回くらいしか思い浮かびません(第2主題なら《英雄》の例があります)。曲の1番最初が同音反復5回(しかも、演奏している全てのパート)なんて、ものすごく珍しいですね。

  1. 長岡英『オーケストラがもっと楽しくなる!クラシック音楽の基礎教養』アルテスパブリッシング、2025、189-193ページ。

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聖光学院管弦楽団第33回定期演奏会

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