聖フィルは3月の定期演奏会で、ブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲を取り上げます。協奏曲と言うと、ほとんどの人はピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲などの独奏協奏曲を思い浮かべるはず。
例外的に2つの楽器のための協奏曲だから、「二重」協奏曲ですね。でも、音楽史において複数の独奏楽器を持つ協奏曲は、それほどレアではありませんでした。
コンチェルト・グロッソ
バロック時代には、ヴィヴァルディの《四季》のような独奏協奏曲だけではなく、バッハのブランデンブルク協奏曲のような複数の独奏楽器を持つ協奏曲も、たくさん作られました。独奏協奏曲=ソロ・コンチェルトに対して、これらはコンチェルト・グロッソと呼ばれます(日本では長い間、「合奏協奏曲」と意訳されて来ました)。
ただ、1710年以降は独奏協奏曲が主流に。18世紀後半から19世紀の大部分において、独奏協奏曲はヴィルトゥオーゾ的な技巧を誇示するための、重要なジャンルであり続けました。
サンフォニー・コンセルタント
一方、1770年頃になると、2つ以上の独奏楽器のための協奏曲「サンフォニー・コンセルタント(イタリア語では「シンフォニーア・コンチェルタンテ」)と呼ばれる形式が成立。この名前を直訳すると「協奏的な交響曲」で、日本では「協奏交響曲」と呼ばれます(現在の感覚では、交響曲ではなく協奏曲)。
「協奏交響曲」と言うと、モーツァルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲を思い出す方が多いはず。これしか知らない、という方もいるのではないかな? 実はパリやマンハイムで流行し、コンサートのメイン・プログラム用にたくさんの協奏交響曲が作られました。
ここで質問。同じ複数の独奏楽器のための協奏曲であるバロックのコンチェルト・グロッソと、古典派のサンフォニー・コンセルタントの違いは?
前者がソロとトゥッティの対比を楽しむ音楽であったのに対し、後者はソロ同士の対比を楽しむ音楽でした。ひとつの楽器の妙技よりも、複数の楽器の妙技を楽しめるサンフォニー・コンセルタントの方が、お得!なのです(下の動画はハイドンの協奏交響曲変ロ長調、Hob. I: 105)。
ブラームスの二重協奏曲まで
ところで、モーツァルトはフルートとハープのための協奏曲も作りました。でも、この曲は協奏交響曲とは呼ばれません。なぜでしょう?
答えは、これがアマチュアのフルート奏者である貴族と、彼の娘のための作品だからです。既に書いたように、サンフォニー・コンチェルタントは、演奏会のメインに成りうる、プロの演奏家のための作品。モーツァルトははっきりと区別しています。
この意味において、ブラームスの二重協奏曲は正しくサンフォニー・コンセルタントの流れを受け継いでいると言えるでしょう。
一方、ベートーヴェンの三重協奏曲は少し微妙かもしれません。3つの独奏楽器のうちのピアノは、ベートーヴェンのパトロンでありピアノの弟子でもあったルドルフ大公のために、彼の技術を考慮して作曲されたと言われてきたからです[注1]。
ベートーヴェン以降ブラームスまでのこの種の重要な作品としては、メンデルスゾーンが若い頃に作った2台のピアノのための協奏曲2曲や、シュポーア(102 ヴァイオリンのあご当て参照。イラストもシュポーア)の計6曲(ヴァイオリンとチェロを独奏楽器とするが1曲、ハープとヴァイオリンが2曲、2つのヴァイオリンが2曲で、二重協奏曲が計5曲。加えて、弦楽四重奏とオーケストラのための四重協奏曲が1曲)、シューマンの4つのホルンのためのコンツェルトシュテュックなどが挙げられます。
- ルドルフ大公の演奏技術を考慮して作曲されたというシンドラーの言葉が受け入れられてきましたが、今日では疑問視されているそうです。西原稔『ベートーヴェン事典』東京書籍、p. 166。
- Johannes Brahms portrait 1889. https://youtu.be/GP2Xy10ii3o?si=WxJRVLgoHdNVRRfU. Machowska, Ohar-Sprawka, Rojek, Wachnik, Kaspszyk with Warsaw Philharmonic Orchestra.

0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。