ちょっと(?!)お休みしているうちに、あっという間に7月。聖フィル第32回定期演奏会まで、2ヶ月となってしまいました。シベリウスの《フィンランディア》、エルガーの《エニグマ変奏曲》、そしてブラームスの交響曲第4番というラインナップ。難しくて練習し甲斐があります……。
今回はブラ4の終楽章について。この楽章は「ミ−ファ#−ソ−ラ−ラ#−シ−シ−ミ」が各1小節ずつの、8小節から成る主題と、それをどこかのパートで繰り返す30変奏、そしてコーダという構成。シャコンヌ、またはパッサカリアと呼ばれます。
今までシャコンヌ、またはパッサカリアを、以下のように教えていました。
- 3拍子の舞曲
- バッソ・オスティナート(低音定型)を繰り返しながら上声が変化していく、バロック時代の変奏曲
- パッサカリアとシャコンヌはほぼ同義
ちなみにオスティナートはイタリア語で「がんこな」の意味。
でも、改めて調べてみたら、最近、定義が変わって来ている![注1] 19世紀初頭にシャコンヌ及びパッサカリアの本質が変化。そのため、17〜18世紀(バロック以降)のシャコンヌやパッサカリアと、19世紀(ロマン派)以降のそれらは、分けて考えなければならないのだそうです。
17〜18世紀のシャコンヌ、またはパッサカリア
- もとはギターによる即興舞曲に起源を持つ
- 作曲された時期・場所・目的によって形式・テンポ・性格が多様
- ほとんどは不定数の短いフレーズsegmentの連なりで構成されるが、それ以上の共通点は無い
つまり、もともとは3拍子でも、オスティナートでも、その上に乗る変奏曲でも無かった! それではどうして、現在一般的な定義が登場したのでしょうか。
19世紀のシャコンヌ、またはパッサカリア
1800年代初頭には、シャコンヌやパッサカリアはほぼ作曲されなくなりました。しかし1870年ごろから、これらのジャンルが再び生み出されるようになります。ただ、新しい作品は、17〜18世紀のものと異なっていました:
- ほとんど例外なく遅く、重厚な性格を持つ
- オスティナート(反復低音)に基づいている
こうしてシャコンヌあるいはパッサカリアという語が、バッソ・オスティナートによる変奏曲とほぼ同義語として扱われるようになったのです。もともとの(バロック時代の)シャコンヌやパッサカリアではオスティナートは特に一般的ではなかったのに、変わってしまいました。
変化の理由
このようなシャコンヌあるいはパッサカリアの再生と変化は、バッハ復興運動(バッハ・リバイバル。メンデルスゾーンによる1829年の《マタイ受難曲》復活演奏に端を発する。089 メンデルスゾーンと《マタイ受難曲》①、090 同②参照)による影響が大きいそうです。
特にバッハの《オルガンのためのパッサカリア》や《無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌ》の再発見(あるいは、当時の人々による新たな評価と演奏解釈)が強く関係しています。
コープマンによる前者(Bach: Passacaglia in C minor, BWV 582)の演奏です。
注
- このコラムは、Silbigerの以下の3つの資料を参考にしました。Silbiger, Alexander. "Chaconne" in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2d ed., ed. S. Sadie and J. Tyrell (London: Macmillan, 2001), 5: 410-415. Silbiger, Alexander. "Passacaglia" in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2d ed., ed. S. Sadie and J. Tyrell (London: Macmillan, 2001), 19: 191-194. Silbiger, Alexander. "Chaconne and Passacaglia." Oxford Bibliographies. Grove Music Onlineから。
- Johannes Brahms portrait 1889. https://youtu.be/HtFMxFQrKc4?si=KR-EDfweOKG_5aqt T. Koopman, Johann Sebastian Bach: Passacaglia in C minor, BWV 582.
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