オペラ《ローエングリン》や《タンホイザー》で有名なドイツの作曲家リヒャルト・ヴァーグナー(1813〜1883)。《ニュルンベルクのマイスタージンガー》前奏曲などで、オケ奏者にもおなじみですね。
彼の生涯はオペラの題材になるくらいドラマティックでした。突然ですが、ここで問題です。
第1問:ヴァーグナーは夜逃げしたことがある。イエスかノーか?
答えはイエス!
ヴァーグナーはかなりの浪費家で、借金人生を送りました。1838年夏、帝政ロシアのリガ(現在のラトビア)のオペラ劇場指揮者になりますが、パリで運を試そうと決心。
しかし、ヴァーグナーと妻ミンナは多額の借金を抱え、パスポートを差し押さえられていました。そのため、ふたりはペット(ニューファンドランド犬のロバー)を連れて、文字通り夜逃げ[注1]。
闇に紛れて武装したコサックの警備兵の目をかいくぐり、国境を示す溝をよじ登って、港でロンドン行きの小さな商船テティス号で密航。最終的にパリに向かいますが、パリでは成功できませんでした。
第2問:ヴァーグナーは指名手配された。イエスかノーか?
答えはこれもイエス!
1842年にドレスデンで初演された《リエンツィ》が大成功し、ヴァーグナーはようやくオペラ作曲家として認められました。また、ドレスデンの歌劇場オーケストラ指揮者の職も手に入れます。ようやく安定した時代が訪れたかと思われたのですが。
1843年ベルリンで、プロイセンにおける3月革命が始まり、各地に飛び火。ドレスデンでも5月蜂起と呼ばれる反乱が起きます。プロイセン軍が支配権を握り始めると、臨時政府を積極的に支持したヴァーグナーに人相書付きの逮捕状(下図)が出ます。彼は命からがら逃亡。
ヴァイマールのリストを頼り、そこから偽のパスポートでスイスに亡命しました[注2]。
1849年5月16日付けヴァーグナーの逮捕令状 見出しに「政治的に危険な人物」と書かれている |
第3問:ヴァーグナーは恩人の奥さんと不倫した。イエスかノーか?
次回に続く。
注
- Millington,Barry,John Deathridge, Carl Dahlhaus and Robert Bailey. "Wagner, (Wilhelm) Richard" in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2d ed., ed. S. Sadie and J. Tyrell (London: Macmillan, 2001), 26: 931-971. 932.
- Op. cit, 935.
- Richard Wagner, 1871, by Franz Hanfstaengl. Warrant for the arrest: From The Wagnerian, "In Discussion with Barry Millington" on 26 November 2012.
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