009 ソナタ形式の崩し方:ブラームス交響曲第1番②、第2主題

2022/05/24

ソナタ形式 ブラームス 交響曲

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交響曲第1番第1楽章において、展開部と再現部の境目を徹底的にわかりにくく作曲したブラームス(008 ソナタ形式の崩し方:ブラームス交響曲第1番①、再現部)。他の部分でも、ソナタ形式を崩して使っています。それは、第2主題の出し方[注1]

第2主題はどこから?

主部から続けて聴くと、どこが第2主題なのかよくわからないですよね。

本来、新しい調(この曲ではハ短調の平行調である変ホ長調)が確立してから出る、第1主題と対象的な性格の旋律が第2主題のはず。でもブラームスは、ここでも開始をわざと隠しています。

正解:第2主題はここから!

どうやって隠しているでしょうか。まず、

新しい調の確立と第2主題のタイミングをずらす

変ホ長調の響きは、この前の練習番号D(4:47〜)ではっきり聴き取れますが、ここに新しい旋律素材はありません。半音ずつ上行する、この楽章の基本動機が続いているだけです。変ホ長調が確立された後、ようやくオーボエが新しい旋律=第2主題を吹きますが、既に調があいまいに(ヘ短調??)なっています。

第2主題の性格

さらに重要なのが、第2主題の(旋律としての)性格です。モーツァルトは、2つの主題に対象的な性格を与えていました。たとえばアイネ・クライネでは、はきはきとした第1主題に対しておだやかな第2主題というように。

もちろんブラームスも、広い音域を持つ第1主題に対して、狭い音域内を行ったり来たりする第2主題と、コントラストを与えています。しかし

2主題は、実は基本動機の変形

半音ずつ上行する基本動機を逆さまにして、a - as - g と es - d - des という、半音ずつ下降する形をふたつ作ります。そして、その逆3音パターンを互い違いに組み合わせると、a - es - as - d - g - des というジグザグ旋律の出来上がり。

冷蔵庫のありあわせの食材を、いつもとちょっと違う味付けで調味してみた、とでも言えそうな(言えないかな??)、新鮮さに欠ける第2主題です。歌いにくいし。

新しい調の確立とずらすことで、第2主題の開始を隠しただけでなく、

「第2主題が第1主題に匹敵するような重みをもつ」という古典派のお約束を崩した

ブラームス。保守的な作曲家と見られがちですが、とんでもない!! 実はこのような細かなこだわりが随所に見られます。次回に続く。

  1. 三宅幸夫『ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68、ミニチュア・スコア解説』音楽之友社、2003、p.viを参考にしています。
  2. Johannes Brahms portrait 1889. https://youtu.be/r8LhN7GN3q0 Simon Rattle, the Berliner Philharmoniker.

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