052 ソナタ形式に関する素朴な疑問②

2023/05/09

ソナタ形式 ドヴォルザーク ハイドン ブラームス ベートーヴェン 楽典 交響曲

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ソナタ形式に関する素朴な疑問シリーズ第2弾。皆さんならどう答えますか。

3.繰り返しに関する疑問

提示部、展開部、再現部を繰り返すことの意味が気になりました

提示部だけを繰り返した後、展開部と再現部を続けて繰り返すのが、本来のソナタ形式。モーツァルトのピアノ・ソナタを思い出してください。これは、ソナタ形式がバロック時代によく使われた二部形式から出発したと考えられるからです。

たとえばバッハの組曲(クラヴィーア用でも管弦楽用でも)は、2つの部分から成りたっていて、それぞれが繰り返されます。

前半の途中で転調し、後半の途中で元の調(主調)に戻るというのがお約束でした。このパターンがそっくりソナタ形式に取り入れられます。後半の前半が展開部の、後半の後半が再現部の元になります。

二部形式と調

バロック時代の組曲は、舞曲を集めたもの。男女で踊るダンスがすぐに終わってしまっては、つまらないですよね。舞曲は長く踊ることができるよう(?!?)、前半後半ともに繰り返されました。

ソナタ形式における繰り返し

ソナタ形式では、繰り返しの意味が変わります。

提示部では、大事な主題が提示されます。1度聴いただけで主題を覚えるのは難しいですが、繰り返されて2回聴くと記憶しやすくなります。第1主題を覚えていないと、再現部に気づくことができません。それではソナタ形式の楽しさが半減してしまいます。提示部の繰り返しは絶対に必要。

でも、後半の繰り返しはソナタ形式においてはあまり意味がありません。かなり早い時期から省略されます。ベートーヴェンの交響曲第1楽章では、第1番から後半は繰り返し無し。4月の定期演奏会で取り上げたハイドンの《時計》第1楽章でも、前半しか繰り返しがありませんでした。

ベートーヴェンと繰り返し

提示部の繰り返しは大事なので、かなり後まで残りました。ベートーヴェンの交響曲では、第9番以外繰り返しています。

第3番《エロイカ》では第1楽章の規模が大きくなりすぎて、ベートーヴェンは提示部の繰り返しを行うべきか迷っていた時期がありました。でも、試演してみて繰り返しは必須と考えるように[注1]。

ロマン派作曲家と繰り返し

保守的な作曲家は、もうすぐ20世紀という時代においても前半の繰り返しをキープしていますよ。ブラームスは交響曲第1番〜第3番まで繰り返し記号があります。また、1893年に作曲されたドヴォルザークの交響曲第9番《新世界より》でも、第1楽章提示部の繰り返しが指示されています。

4.第2主題の調

提示部で転調する幅(長調なら5度上の長調、短調なら3度上の長調)は、どのような経緯で定められたのか気になります

一番近くて行きやすい調だからでしょう。ハ長調の5度上の調であるト長調は、シャープ1つの調。ハ長調の7つの音のうち、1つだけシャープが付きますが、他の6つは変わりません。

短調の場合の3度上の長調(イ短調とハ長調など)は、調号が変わらない調ですから、全ての音が共通です。実際には第7番目の音が半音高められる必要がありますが、他の音は変わりません。

共通音が多いということは、近い関係の調ということ。すっと移ってまたすっと戻って来ることができます。

ソナタ形式は、誰かが規則を定めたものではありません。作曲家たちがたくさん作曲するなかで、作曲しやすい方法が定型になりました。そしてその定型も、時代とともに変化して行ったのです。

  1. 土田英三郎『ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調《英雄》作品55、ミニチュア・スコア』解説、音楽之友社、2006、p.x。
  • Portrait by Joseph Kar l Stieler, 1820. 

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