しばらく夏休みを頂いていた聖フィル♥コラム、再開です。第26回定期演奏会が近づいてきました。今回のメインはブラームスの交響曲第3番。聖フィルでは既に1番、4番、2番を取り上げていますが、3番は終わり方が難しいですね。
第3番は、1883年夏に作曲
もうすぐ20世紀というのに、1824年完成・初演のベートーヴェンの《第九》と同じオーケストラ編成(2管編成)です。でも、ブラームスは各楽器の音色や、音域によって変わる音質を活かし、時にブレンドしてブラームスならではの響きを作り出しています。
映画「さよならをもう一度」にも使われた第3楽章は、ブラームスのオーケストレーションの最も魅力的な例のひとつ。実は私、音大で楽器を聴き取るクイズとして使っています。
この楽章冒頭の、チェロが始める主要主題。この旋律はいろいろな楽器に受け渡されて何度も登場しますが、毎回異なる世界が作り出されます。ブラームスの凄さですね。
ここで突然ですが、オケ関係者のみなさんに問題です。3楽章全体で
主要主題は何回、どの楽器の演奏で登場するでしょうか?
最初のチェロに引き続いてヴァイオリンが演奏しますね。この2回を含めて全部で6回出てきます。ホルンとオーボエのソロはわかりやすいですね。難しいのは3回目。演奏している楽器は何でしょう??
答はスコア入りの動画でどうぞ。
オーボエとホルンに、フルートも入っているのです。そうわかって聴くと、フルートも聴こえますね。録音のバランスにもよるようで、フルートが出るとオーボエが聴こえにくい傾向があります。むしろ、溶け合って3つの楽器の音が捉えられない方が良いのかもしれませんね。
最後の6回目は弦楽器のオクターヴ・ユニゾンなので、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロと答える学生が多いのですが、正解はヴァイオリンとチェロ(こういうとき、ヴィオラは外されるんだよと教えます)。
正確に言うと、ヴァイオリンはファーストだけ(スコア入りの動画 28:46〜)。あのメロディー弾けると思ったのに無かった……と、セカンドさんが嘆いていました。
ブラームスは交響曲にスケルツォ楽章を入れず
ちなみにベートーヴェン以来、交響曲の第3楽章はスケルツォです。でも、ブラームスはスケルツォを使っていません。
第1番の第3楽章はクラリネットのソロで始まる、ひなびた感じの楽章。第2番の第3楽章はのんびりとした優美な感じですよね。第4番の第3楽章は最もスケルツォ的な性格を持っていますが、3拍子でありませんし、トリオを挟むサンドイッチ構造もしていません。そして第3番のこの曲は甘く切なく、でもどこか淡々とした雰囲気。
主要主題は、実は精密に計算されている
何気なく作られているように見えますが、実は違います。長い音符が最初2回は3拍分、次の2回は2拍分。次に1拍半が1回、そして最後に1拍が2回。次第に音価が短縮され、「凝縮された時間が第11小節の5連符に集約」されているのです[注1]。
注
- 三宅幸夫『ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68、ミニチュア・スコア解説』音楽之友社、2003、p.ix。
- Johannes Brahms portrait 1889. https://youtu.be/2tB2SLLnPZg Vienna Philharmonic Orchestra, Sir John Barbirolli, recorded December 1967. 譜例入り https://youtu.be/Ae4Nfh3PQUA Berliner Philharmoniker, Sir Simon Rattle.
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