7月4日はアメリカの独立記念日。ボストンでは毎年、市内を流れるチャールズ・リバー沿いのエスプラネードにあるハッチ・シェルで、ボストン・ポップスのコンサートが開かれます。
私もボストンに留学した最初の年に、コネチカット州から遊びに来た友人たちと見に行きました(野外コンサートなので入場無料。でも、翌年からはテレビ鑑賞。その方がよく見えますし)。
今年は、3年ぶりの開催。毎年、ボストン・ポップスの July 4th コンサートの最後を飾るのは、
チャイコフスキーの序曲《1812年》
フランス軍に対するロシア軍の勝利を記念する音楽ですから、アメリカの独立とは全く関係ありません。でも、毎年聴いているボストンニアンたち。
序奏部のロシア聖歌は静かに待ち、フランス軍とロシア軍との戦いに進んで《ラ・マルセイエーズ》が聴こえると、ヒューヒューと軽く口笛を吹いて。川沿いに何台も設置された大砲による本物の音が演奏に厚みを加え、花火ショーが続きます。
ロシアによるウクライナ侵攻以来、日本でも《1812年》演奏の自粛が続きました。今年の July 4th コンサートはこの曲無しでどうやってまとめるのかな ?? と思ったら。
例年どおり《1812年》を演奏
ボストン・ポップスの指揮者キース・ロックハートは、今年のコンサートからこの曲を削るように求める声もあることについて、理解できるが、伝統を継続していきたい述べています[注1]。
多くの点でほとんどのアメリカ人は、《1812年》を私たちのものと考え、元々の作曲理由を実際に適用することなく、最も広く一般的な用語で自由を祝うものと考えるようになったと思う 。
確かに、ロシア軍の勝利やら、この曲の内容をよく知らないボストニアンも多いのではないかと思います。
政治と芸術は別と考えるのではなく、ボストン・ポップスの伝統を尊重し継続するというロックハートの決断は、(一部に批判はあったかもしれませんが)正しい選択だったでしょう。
チャイコフスキー:序曲《1812年》最後の部分、2019年
ウクライナ侵攻に反対しないロシア人を解雇する一方、既に作曲家の作曲意図とは違う意味を持つようになったからと、元々ロシア軍勝利を祝う曲として作られた《1812年》の演奏を躊躇しない。さすが、物事を柔軟に考えるアメリカ人!
ちなみにロックハートは、1995年に30代の若さでボストン・ポップスの常任指揮者に抜擢されました。こんな若い人がジョン・ウイリアムズの後任になるのかと驚いたものです。その彼も、すっかり貫禄がつきましたね。
注
- https://www.wbur.org/news/2022/07/02/boston-pops-july-4th-esplanade-return
- Cabinet card portrait of Pyotr Ilyich Tchaikovsky, c. 1888 by Émile Reutlinger. https://youtu.be/JAjN9WkTwA8 Boston Pops Orchestra, Keith Lockhart.
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