ソナタ形式とは:
- 古典派以降、交響曲や協奏曲、ソナタなどの第1楽章に使われる
- 提示部、展開部、再現部の3部分から成る
- 提示部では2つの主題が提示される
- 提示部の途中で転調し、第2主題は新しい調で提示される
- 主調が長調の場合は5度上(属調)、主調が短調の場合は3度上(平行調)へ転調するのが典型
- 展開部では、それまでに登場した素材が展開される
- 再現部では2主題が両方とも、主調で再現される
- 提示部の前に序奏部、再現部の後にコーダが付いても良い
- 提示部は重要なので繰り返されることが多い。繰り返し記号があれば、展開部の始まりがわかる
《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》KV525の第1楽章
たくさんの交響曲や室内楽曲を吹いたり弾いたり聴いたりしているオケ関係者の方々なら、第2主題や再現部など、ここ!とぱっとわかることでしょう。超有名な《アイネ・クライネ》ですから、弦楽器の方なら楽譜を見なくても第2主題を歌えると思います。
一般大学にもピアノや吹奏楽、管弦楽の経験がある学生はたくさんいます。一方で、特別な音楽経験は無く、楽譜を読めないという学生も(種々の事情により)履修しています。
そのような学生も、ソナタ形式の仕組みを(理論としてだけではなく)音楽のなかで理解させたい。そのため、提示部をいくつかのセクションに分けたり、音楽を流しながらカーソルやポインターで楽譜を追って、どこまで進んでいるのかを示すこともあります。
まず最初に、4段一度に進んでいくことや、1小節に4分音符が4つ入っていることなど、楽譜の基本を確認。
楽譜ってグラフィックな表記体系なので、黒っぽかったら音が多い、五線の上の方は音が高いなど、楽譜を読めなくても見当がつくことも多いと説明します。
曲頭が提示部で第1主題。繰り返し記号の後が展開部。ですから、
今日の使命:この曲の第2主題と再現部を見つけること
というわけで、オケ関係者にはすぐ見つかると思いますが、一般大学の学生の場合を想像してみてください。
主調が長調の場合、5度上の調に転調しても長調。絶対音感を持っていないと、聴き分けるのは難しいですよね。第2主題を見つけるために、どう説明したら良いでしょうか?
臨時記号
転調すると、臨時記号が必要になります。今までほとんど無かった#♭♮などの記号が増えたら、他の調にいるか、あるいは他の調に向かっている証拠。《アイネ・クライネ》の主調はト長調なので、5度上はニ長調。#が出てきたら要注意ですよね。
主題の性格
第1主題がはっきりしたリズムで生き生きした感じなので、第2主題はおそらくそれと対照的。レガートでおっとりした感じなのでは?
タイミング
第1主題を十分に楽しんで、そろそろ違う世界に行きたいというあたりで、第2主題が登場するはずです。
モーツァルトの場合、早すぎず遅すぎず。もしも提示部が3ページに渡っていたら、2ページ目が狙い目(少なくとも、提示部の最初1/4では早すぎ。最後1/4では遅すぎます)。
しかも、この曲では区切りがついています。全パートがしっかり一拍休んで、その後から新しい主題が出るのです。
誰にでもわかるように第2主題を作っているモーツァルト!
この第2主題、55小節ある提示部の28小節目から始まります。測ったみたいに真ん中!
コンパクトな展開部(20小節)の後、和音無しのユニゾンの第1主題が始まります。「ただいま!」「おかえり!」の再現部ですね(4:09〜)。
おっと、今日の使命はまだ終わっていません。提示部で見つけた第2主題が、今度は主調で再現されることを確認してください。さっきとは異なる調です(4:54)[注1]。
これで無事、本日の任務完了!
モーツァルトさん、音楽を専門に学んでいない人にもわかりやすい音楽を作ってくれていますね。注
- もしも第2主題だと思った旋律が、再現部で提示部と同じ調で出てきたら、残念ながらそれは第2主題ではありません。もう一度、提示部で探し直してください。
- Mozart, c. 1781, detail from portrait by Johann Nepomuk della Croce. https://youtu.be/MeaQ595tzxQ Academy of St. Martin in the Fields, Neville Mariner (1985) .
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