026 リストの生涯①:リストとチェルニー

2022/10/11

チェルニー ピアノ ベートーヴェン リスト 練習曲

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ハンガリー狂詩曲を作曲したフランツ・リスト(1811〜1886)は、様々な面を持ったちょっと不思議な音楽家です。彼の生涯をたどってみましょう。第1回目は少年時代。題してリストとチェルニー。

リストは、ハンガリーの西部地域(第一次世界大戦後にオーストリアに割譲され、ブルゲンラントと呼ばれるようになった地域)で生まれました。伝統的にドイツ語を話す人口が多く、リストも他のマジャール人と同様、ドイツ語で育ちました。

リストの父

父のアダム・リスト(1776〜1827)は、あのヨーゼフ・ハイドンが30年仕えたエステルハージ家の事務官でした。アマチュアの歌手、ピアニスト、チェリストとしてサマーコンサートにしばしば参加。そこでハイドンご本人とも知り合いになったそうです。

フランツ・リストは、早くも6歳で音楽の才能を発揮します。父がフェルディナンド・リース(1784〜1838、ドイツの作曲家)の協奏曲を弾いているのを聞いて、その主題のひとつを暗記して歌ったのです。父は息子にピアノ・レッスンを開始。

1820年(9歳)の最初の公開演奏会で、リースの変ホ長調の協奏曲を演奏します。好評だったため、父はさらに意欲的なコンサートを近くのプレスブルガーで企画。これがハンガリー貴族たちの注目を集め、後にリストの海外留学の資金援助につながります。

プレスブルガー・ツァイトゥング紙は、彼の演奏について「称賛を通り越し、最高の希望を正当化する」と報じました18201128日)

フェルディナンド・リース:ピアノ協奏曲第2番変ホ長調 op. 42

リストとチェルニー

父は初め息子を、ワイマール宮廷楽長を務めていた高名なピアニスト、フンメル(1778〜1837)に習わせよう考えますが、レッスン料が高くて断念。ウィーン郊外に住んでいたチェルニーのところに連れていきます。

後年チェルニーは自伝のなかで、リストとの最初の出会いを以下のように書いています。

彼は青白く、病弱そうな子供で、演奏中、まるで酔っ払ったようにスツールの上でゆらゆらと揺れていた。(中略)それにもかかわらず、私は自然が彼に授けた才能に驚かされた。彼は、確かに私が視唱(注:楽譜を見てすぐに演奏すること)させたものを、純粋な「自然」のように弾いた。 
チェルニーはリストを弟子にすることを承諾。レッスン日はすでにいっぱいだったため、チェルニーは毎晩自宅でリストを指導。しかも、レッスン代を受け取ることを拒みます。対位法などの理論は、ウィーン宮廷楽長、サリエリがやはり無報酬で指導してくれました。

レッスンの内容

リストがチェルニーに師事したのは14ヶ月間だけでしたが、「これほど熱心で、才能があり、勤勉な生徒はかつていなかった」とチェルニーは書いています。クレメンティの《グラドゥス・アド・パルナッスム》やチェルニーの《熟練教程(40番練習曲)》でテクニックの基礎を学び、フンメル、モシェレス、バッハ、ベートーヴェンの作品を勉強。

全てを素早く学び、記憶するように教育され、リストは恐るべき読譜力を身につけました。ウィーンで行った演奏会が好評だったため、父はリストをパリに連れて行くことを計画。1823413日にお別れコンサートが開かれることになります。

リスト、ベートーヴェンに会う

チェルニーがベートーヴェンと親しかったおかげて、リストは父親とともに、4月初めにベートーヴェンに会うことができました。ベートーヴェンの会話帳には、リスト(あるいは父親)による、413日のお別れコンサートへの招待が記録されているそうです[注2]。

  1. このコラムは以下の情報に基づきます。WalkerAlan. "Liszt, Franz," in The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 2d ed., ed. S. Sadie and J. Tyrell (London: Macmillan, 2001), 14: 755-877. 755-757.
  2. ベートーヴェンは、リストが即興で演奏できるようなテーマを依頼されたとも伝えられます。また、ベートーヴェンがステージに上がり、皆の前で少年の眉間に聖別のキスを施したという伝説も残りました。しかし『会話集』には、ベートーヴェンが演奏会に出席することも、テーマを提供することもなかったと記されています。聖別のキスは演奏会ではなく、ベートーヴェンに会いに行ったときに行われた可能性が高いと考えられます。
  • Portrait of Liszt by Henri Lehmann (1839).  https://youtu.be/6VTjZ04FUFA  Christopher Hinterhuber, New Zealand Symphony Orchestra, Uwe Grodd.

演奏会情報

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聖光学院管弦楽団 第26回定期演奏会

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