《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第1楽章のソナタ形式の分析、ちょっと難しかったですか。主調が長調のとき、第2主題は5度上の属調で提示されます。属調も長調なので、理詰めで考えなければならないのでしたね。ソナタ形式の分析、今回は:
モーツァルト:交響曲第40番ト短調 KV550 第1楽章
主調が短調の曲では、第2主題は3度上の平行調、つまり長調で提示されます。これなら、絶対音感に自信がない人でも変化を感じることができるでしょう。
古典派は長調の時代。短調の曲って少ないですよね。そのため、分析対象が交響曲になってしまいました。この交響曲のスコアは木管4段、ホルン2段、弦4段から成るので、10段まとめて進みます。
第2主題はどこ?
短調から長調に転調して(正確に言うとト短調から変ロ長調に転調して)、落ち着いてから提示される、新鮮な旋律はどれでしょう?
主題の性格
《アイネ・クライネ》と同様、バランス感覚抜群のモーツァルトは第2主題に、第1主題と対象的な性格の旋律を選んでいます。8分音符と4分音符による不安気で落ち着かない第1主題に対して、第2主題はの〜んびり平和な感じ。
楽器
弦楽器(ヴァイオリン)が担当する第1主題に対して、第2主題は弦楽器の呼びかけに木管楽器が答える形。続く2回目は、交代して木管に弦が答えます。改訂稿で加えられたクラリネットも活躍。
区切り
《アイネ・クライネ》より、さらにはっきりした区切りがありますね。第2主題が出る前の小節は、ゲネラルパウゼ。全ての楽器が、1小節まるごと休んでいます。しっかり区切りを付けて、この後に出る重要な旋律(=第2主題)に、聴く人の注意をひきつけています。
再現部の第2主題
再現部の確認もお忘れなく。第2主題が主調、つまりト短調で再現されています。提示部で長調だった旋律の、短調バージョンを楽しんでください(4:27〜)。というわけで、この楽章は典型的なソナタ形式で作られています。
再現部の開始部分
実はモーツァルト、ソナタ形式の枠組みの中で洒落た(!?!)ことをしています。展開部から再現部へ移り変わるところに注目!
少しずつ下りてくるフルートとクラリネットのフレーズが終わらないうちに、それにオーバーラップして再現部の第1主題が始まるのです。
時代を先取り! モーツァルト
ソナタ形式において展開部と再現部の境目をあいまいにするのは、メンデルスゾーンやブラームスなどロマン派の作曲家たち。古典派ではかなり珍しいでしょう。
自在な転調が続く、前衛的な展開部。木管の旋律を聴いているうちに、いつの間にか開始される再現部。おしゃれで怖い交響曲第40番の第1楽章は、モーツァルトがどれほど先の時代を見据えていたかをわたしたちに教えてくれています。
注
- Mozart, c. 1781, detail from portrait by Johann Nepomuk della Croce. https://youtu.be/BfcXoB9y4rc Czech National Symphony Orchestra
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